webで認知はできるのか?

「webで認知はできる?できない?」という話がある。特に、マス広告を中心にマーケティングをしてきたマーケターからすると、この問題に当たるケースが多い。かくいう私も、10年以上前からこの問題に直面している。

中にははっきりと「webで認知は無理」という著名なマーケターもいる。それに対して、「いやうちはwebしかやってません」というマーケターもいる。

これはどちらも正しく、間違いではない。ではなぜこうした議論が生まれるかというと、彼らがどういう商品をどういうやり方でプロモーションしているかによって、この問題に対する感じ方、捉え方の違いによるところが多いのが実情だと考える。

webマーケティングに特化している企業やそのマーケターの考え

もし、この人たちの今回のテーマである質問をしたら、間違いなく「webで認知できる」というだろう。
当たり前だが、webしか行っていないのであれば、商品を知る方法も基本webと考えているからだ。
特に、SNSをうまく活用したD2C企業や、検索ニーズの強い業界(人材・不動産)などは、この考えが多いと思う。

なので、彼らからすると「webで認知はできる」という、当たり前の回答がでてくる。

マスマーケティングも行っている企業やそのマーケターの考え

この議論の中心人物がまさにこれに該当する方々だと思う。TVCMを始めとするマスメディアをつかったプロモーションをしている中、webにも力を入れていこうとするものの、思ったほどの効果を感じられていない。だから、「webで認知はできない」という声が出てきているのではないだろうか。

もちろん、効果が全く無いことはない。ただ、比較対象がマス広告などになるため、そこと比べるとあまり、、、となるケースが多いのだろうと思う。

同じ土俵で語れないものを語ることがこのテーマを複雑にしている

このように、事業規模、マーケティング手法やコストが違う人たちが、同じwebマーケティングを行っているという共通項で括られた中で「webで認知できるか?」という議論になるため、話が複雑になっていると思われる。プロボクサー・キックボクサー・総合格闘技の人を集めて「最強の打撃はパンチだ」という話をしているようなものだと。格闘家という共通項はあるが、パンチだけ、立ってのパンチとキックだけ、基本なんでもokと、競技が全く別なので、答えは一つになるわけない。

これと同じ様に「マーケター」という括りで話をしても、それぞれの

マスマーケティングをやっている企業は「webで認知できない」と感じる可能性が高いやり方が違うから、意見が分かれるのは当たり前である。

マスマーケティングをやっている企業は「webで認知できない」と感じる可能性が高い

このテーマに一番関心の高いと思われるマスマーケティングをやっているマーケターの方。私もこの立場に近く、10年以上このテーマと向き合っているが、結論から言うと「webで認知は難しい」と考えている。それは先述した通り、マスの効果が大きいため、webで施策を行ってもよくわからない、霞んでしまうことが多いからだ。

1つ事例を。

ある新商品を発売した。TVCMは発売と同時ではなく、2,3週間後からスタートすることになっていた。そこで先行してweb広告を配信をした。予算は大きくなかったが、クリック数やユニークユーザー数などをみると、数万レベルでサイト訪問はあった。バナーのクリック率も高かった。しかし、CVはほとんどなかった。

そして、TVCMが始まった。その途端、アクセスはさらに増え、CVもそれまで週に1桁ぐらいだったものが、一気に1日2桁と爆像した。ターゲットは40代以上と、決してwebリテラシーが低く、普段webメディアをみていないという層というわけではない。にも関わらず、webだけではCVがほぼなく、TVCMで一気に増えた。TVの持ちパワーを目の当たりにした瞬間だった。

他にも、同様にマスマーケティングを行っている知人と話をしていたところ、「YouTube広告をやると、視聴回数やクリックは増えるけど、CVに結びついているかというとあまり、、、」という話がでてきた。おそらく、同じようなポジションだと、このように感じるマーケターは多いだろう。

大事なのはターゲティング

では、webで認知ができないから、従来どおりマス・マーケティングに力を入れていればいいかというとそういうわけでもない。TVの力は依然強いものの、その効果が落ちているという話も聞く。そして、TVを見る時間は様々な年代で減ってきており、webに接触時間が増えているのも事実。指を加えてwebはやらない、というのも違うだろう。

そこで大事なのはやはり「ターゲティング」だ。TVなど見ていない層がターゲットになるのであれば、webと向き合ってなにかしら施策をやっていく必要はある。今後間違いなくこの層は拡大すると思われるので、手を打たないと行けないのも確か。生産性・効率面が悪くなったとしても、手を入れたいかないと行けないだろう。

ただ、ターゲットがシニア層であれば、無理にやる必要もない。特に、日本は超高齢化社会なので、今TVを見ている層が今後も多いだろうし、無理してwebをやる必要もない。(もちろん、全くやらないはダメだが)

結局のところ、メディアは手段でしかない。まずはしっかりとターゲットを決め、その層がどういうメディアに接触しているかを考えて上で、最適なメディアを選び、施策を打つ。

webで認知できないと感じているマーケターは、まず「ターゲットは誰か」を再認識・再定義してみて、そのターゲットに対してweb施策が有効かどうか考えてみるのはいかがでしょうか?